研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、ウィトゲンシュタイン哲学における「言語ゲーム」が変容する理路を究明することによって、その教育学的意義を読み解くことにある。その読解のためには、昨年度に解明したウィトゲンシュタインの規則論や「私的言語」論に加えて、彼の「規準」論や「意図」などの志向性概念を解明する必要がある。したがって本年度は、「規準」概念や「意図」などの志向性概念を研究し、博士論文を完成した。「規準」概念の分析は、中国四国教育学会第61回大会の発表を通じて、志向性概念の分析は教育哲学会第52回大会での発表を通じて行った。そして、これらの研究発表の場を通じて、新しい解釈を得た。ウィトゲンシュタインは、後期哲学を代表する著作『哲学探究』第1部において、「規則」、「私的言語」、「規準」そして「意図」などの志向性をめぐる考察を展開しており、そこで「言語ゲーム」の変容可能性を示している。すなわち「言語ゲーム」の学習者が既存の「言語ゲーム」を揺るがし、それによって新たな「言語ゲーム」を産み出し得るダイナミズムが存在するのである。この解釈は、従来のウィトゲンシュタイン研究が十分に解明することのできなかった、教育的営為の孕み持つダイナミズムを描き出している。道徳教育や高等教育といった研究領域においても、このウィトゲンシュタイン解釈が有効であることも同時に示した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)
教育学研究紀要 55巻(CD-ROM)
ページ: 237-242
Ethics and Education Vol.5, No.1
ページ: 25-39
『広島大学大学院教育学研究科紀要』第三部 58号
ページ: 97-106
120001864719
倫理学研究 19号
ページ: 51-68