研究概要 |
本研究は、深海微生物が産生する二次代謝産物Cyanosporaside類の推定前駆体の合成と機能解析に挑むものである。この化合物の構造上の特徴として、i)塩素が置換したシクロペンタ[a]インデン環、ii)C3a位の第3級アルコールに結合した珍しい単糖、iii)ベンジル位(C9位)に位置するニトリル基、の3つが挙げられる。その推定前駆体として9員環エンジイン化合物が提案されているものの、このような特異な構造が"いつ"、"どのように"、"何のために"構築されるのかは未解明である。そこで、有機合成化学的手法を最大限に活用することによって9員環エンジインを調製し、Cyanosporaside類の生成経路の解明をはじめ、その生理活性や物理的・化学的性質について精査することとした。 標的とする9員環エンジインの合成における問題点は、(i)高度に歪んだ9員環エンジイン構造をいつ、どのようにして構築するか、(ii)アグリコンのC3a,C3位に位置するtrans-ジオールの立体選択的構築、(iii)3-オキソ-4-メチル-β-フコピラノースの合成、の3つである。(i)について、アルデヒドに対するアセチリドの分子内付加反応による9員環形成を試みる。(ii)については、アルデヒドとケトンとの間の不斉ベンゾイン生成反応と、それに続くヒドリド還元とによって構築できるものと期待した。(iii)についても、標的の単糖は分子内に第3級α-ケトール構造を有するため、ベンゾイン生成反応を用いることによって合成できるものと考えている。
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