研究課題
特別研究員奨励費
IPS-1はIFN産生、そして細胞死の誘導といった多彩な機能を介して抗ウイルス応答に貢献するが、IPS-1の活性がどのように制御されているのかは不明である。本研究では、IPS-1の翻訳後修飾に注目し、LC-MS/MSを用いてIPS-1の新規翻訳後修飾:γ-カルボキシル化を見出した。そして、その翻訳後修飾がIPS-1の機能制御に関わる可能性について検討した。まず、γ-カルボキシル化サイトにアラニン変異を導入した変異体IPS-1 4Aの機能を検討した。IPS-1の過剰発現によってIFN-β産生に必要な転写因子:IRF-3やp38/JNKのリン酸化が上昇することが、我々や他の研究によって明らかになっている。しかしながら、変異体IPS-1 4Aの過剰発現はIRF-3やp38/JNKのリン酸化には全く影響がないが、カスパーゼの活性化を著しく亢進させることが分かった。次にカルボキシル化酵素GGCXのノックダウンを行った。すると、ノックダウンしたHeLa S3細胞においては、dsRNA刺激によるカスパーゼの活性化が亢進することがわかった。また、293T細胞において、IPS-1の過剰発現によるカスパーゼの活性化は、GGCXの共発現によって抑制されることもわかった。以上の結果より、GGCXによるγ-カルボキシル化を介した細胞死の抑制効果は、IPS-1のγ-カルボキシル化を介している可能性が強く示唆された。本研究により、抗ウイルス応答において重要な働きを担うIPS-1において、翻訳後修飾を介した機能の切り替えが行われている可能性が示唆された。IPS-1はウイルス感染によるIFNの産生と細胞死の両方を制御する必須の分子であることが知られていたが、その活性化制御はこれまでほとんど分かっていなかった。現在、産総研の夏目徹博士との共同研究により、IPS-1の機能の切り替えを担う因子の探索を行っている。
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