研究課題
特別研究員奨励費
線状高分子ポリエチレングリコール(PEG)が環状分子α-シクロデキストリン(α-CD)の空洞に取り込まれることにより形成される超分子であるポリロタキサン(PR)に対し、その環状分子を液晶性基(メソゲン)で化学修飾した液晶性PRは、新規高分子液晶かつ新規ポリロタキサン誘導体として注目される。本研究では、液晶性PRの構造・相転移挙動・ダイナミクスについて議論すること、及びポリロタキサンの固体材料としての応用可能性を探索することを目的として、(1)環状分子を様々な置換基で修飾したPR誘導体の固体状態での構造解析・熱分析・粘弾性測定・誘電緩和測定などの物性測定とその結果の比較、(2)ポリロタキサンの環状分子間をオリゴマー鎖(マクロ架橋剤)で架橋した、無溶媒状態の固体薄膜材料(マクロ架橋エラストマー)のメゾスコピック構造解析とマクロな力学物性の評価、を行った。ヒドロキシプロピル(Hy)化PR(HyPR)について、Hy基の導入率及びCDによるPEGの被覆率(包接率)を変更させた場合の物性を比較した。動的粘弾性測定の結果、HyPRのガラス転移に相当する力学緩和(CD複数個の協同運動)は、HyPRの包接率が低いほど、またHy基導入率が高いほど低温域で発現した。このことからPR誘導体の固体中において、CD間の相関が物性に大きく影響していることが明らかとなった。以上の成果をMacromolecules誌に投稿した。マクロ架橋エラストマーでは、マクロ架橋剤の種類により、PRドメインとマクロ架橋剤ドメインとが相溶する場合と、相分離構造を形成する場合見られた。相分離を示すマクロ架橋エラストマーについて、組成比を変化させた試料を数種類作製し、組成によるガラス転移温度及び力学特性の変化を確認した。一方で小角X線散乱においては、ピーク位置の変化が見られたのみであり、相分離構造は濃度揺らぎを反映したスピノーダル構造であると考えられる。
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