研究概要 |
microRNAなどの内在性小分子RNAはArgonaute蛋白質と複合体を形成し、特定RNAの分解や翻訳抑制に関与する。私は、ショウジョウバエArgonauteファミリーに含まれるPiwiサブファミリー蛋白質群(Piwi,Aubergine,AGO3)が生殖細胞において23-29塩基長のpiRNAと呼ばれる小分子RNAに結合し、トランスポゾンの発現抑制に寄与することを報告していた。トランスポゾンは、生殖細胞同様に体細胞においても抑制状態にあるが、その抑制機構は不明である。そこで、体細胞においても生殖細胞同様の機構が働いているか否か検討した。その結果、Argonaute蛋白質の一つであるAGO2がトランスポゾンに由来する21塩基長の内在性小分子RNAと相互作用することを見いだし、endogenous siRNA(esiRNA)と命名した。また、トランスポゾン以外のゲノム領域に由来するesiRNAを見いだし、それらは長いヘアピンRNA構造を有することを明らかにした。esiRNAはDicer2ノックダウン細胞では顕著に減少したことからDicer2がesiRNA生合成の責任因子であることが分かった。さらにS2細胞において、esiRNAの生合成を抑制すると、トランスポゾンの発現上昇が認められた。以上の知見は、トランスポゾンの発現抑制が転写後レベルで制御されることを意味し、小分子RNAによるゲノムの品質管理機構の一端を明らかにしたという点で重要である。
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