研究概要 |
セルロース分解菌Trichoderma reeseiを、セルロースの酸化処理によって調製したセロウロン酸(β-1,4グルクロナン)を含む液体培地で培養した。T.reeseiはセロウロン酸を唯一の炭素源とする培地で生育することができ、菌体外液中に27kDaの分子最を持つタンパク質を最も多量に生産することが判明した。そこで検出したタンパク質のcDNAをT.reeseiの全ゲノム情報を用いてクローニングし、さらにメタノール資化酵母Pichia pastorisに導入し、組み換えタンパク質を大量発現させた。得られた組み換えタンパク質でセロウロン酸を処理し、分解生成物を^<13>C NMRで分析したところ、本酵素はβ-脱離反応によりセロウロン酸を分解するβ-1,4グルクロンナンリアーゼ(TrGL)であることが示された。TrGLのアミノ酸配列と相同性の高いタンパク質を検索した結果、全てHypothetical proteinであり、どの多糖リアーゼ(PL)とも相同性を示さなかつたことから、本酵素は新規多糖リアーゼファミリー(PLファミリー20)に属することが明らかとなった。 本研究により、セルロース分解菌として有名な糸状菌Trichoderma reeseiがグルクロナンリアーゼを生産することが初めて証明された。また、データベースを用いた配列解析から、約10のグルクロナンリアーゼ活性を有する可能性が高いタンパク質の存在が明らかになり、いずれも高い細胞壁(セルロース)分解能を有する微生物由来のタンパク質であった。これまで自然界におけるセルロースの分解機構としては、加水分解酵素(セルラーゼ)による分解のみが知られているが、本酵素の発見はセルロース分解にリアーゼ型酵素が関与することを示唆する重要な知見である。
|