日本で実施されている政策評価の多くは定性的なものが主であり、定量的に行われているものは数少ない。そこで、本研究では、昨年度に引き続き、日本で実施されている自動車排気ガス規制を取り上げ、定量的な政策評価の重要性を示した。昨年度は規制が始まる前の情報を用いた事前評価を行ったが、今年度は規制後の情報を用いた事後評価も試みた。 現在、日本では3種類の自動車排ガス規制が用いられている。それらは、古くからある単体規制と近年になり施行された車種規制、運行規制である。単体規制は新車を対象とした汚染物質の原単位規制であり、車種規制と運行規制は旧車を対象とした直接規制である。ただし、運行規制は自治体条例の下で実施されている規制であり前者と比べると規制順守の度合いは弱いものとなっている。 しかし、実際にこれらの規制がどの程度の大気環境改善に寄与したのかどうかは明らかとなっていない。そこで、日本の長期大気環境測定情報を用いて、この点について検証を試みた。 分析の結果、単体規制と車種規制は大気環境を改善していることが示された。一方で、運行規制の効果は限定的であった。したがって、条例のような大きな強制力を持たない規制については、遵守を担保するような制度設計を行う必要がある。また、大気環境改善効果を見ると、単体規制のそれは他の2規制に比べて大きなものであることが明らかとなった。つまり、まず、新車の環境能力を改善させ、その後に旧車から新車への代替を促進させるような制度の在り方が望ましいことを示していよう。
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