研究概要 |
糸球体上皮細胞のスリット膜関連蛋白は、糸球体由来蛋白の尿漏出防止機構に重要な役割を担っている。(プロ)レニン受容体[(P)RR]はこれまでに、電子顕微鏡による免疫組織学的検討により、ラット腎において腎糸球体上皮細胞に豊富に存在することが知られている。 平成21年度においては、ヒト培養ポドサイトにおいて、糸球体由来蛋白尿のバリアーとして主要な役割を有するすスリット膜関連蛋白発現に及ぼす、(P)RRの機能について検討を行った。 ヒト培養腎糸球体上皮細胞において、(P)RR mRNA発現抑制がスリット膜関連蛋白であるpodocin、nephrin、ZO-1、podocalyxin、synaptopodin、CD2APの各mRNA発現に与える影響と、組み換え型ヒトプロレニン負荷がこれらスリット膜関連蛋白mRNA発現に与える影響について検討した。 ヒト(P)RR mRNAをノックダウンするsiRNAの一定濃度(100nM)を用いたまま、細胞密度を変えることによりトランスフェクション効率を変化させ、(P)RR mRNA発現を9-79%ノックダウンした(N=25)。これらの細胞を回収し、real time RT-PCR法を用いて、同一の細胞サンプルにおける(P)RR mRNA発現とスリット膜関連蛋白mRNA発現を測定し、両者の相関を解析した。次に、(P)RR mRNA発現と有意な相関を示したスリット膜関連蛋白について、プロレニン刺激によるmRNA発現の時間依存性(0,0.5,1,3,12,24時間後)(N=3)、濃度依存性(0,0.2,2,20nM)(N=3)を検討した。 その結果、ヒト培養腎糸球体上皮細胞において、(P)RR mRNA発現はスリット膜関連蛋白の一つであるZO-1 mRNA発現と有意な正の相関(R=0.645)を示し、他のスリット膜関連蛋白とは有意な相関を示さなかった。さらに、プロレニン刺激により濃度依存性、時間依存性にZO-1 mRNA発現は増加し、最大反応はプロレニン2nM負荷後1時間で得られ、ZO-1 mRNAの9.8倍の増加を観察した(N=3)。これらより、ヒト培養腎糸球体上皮細胞において、生理的濃度のプロレニンは(P)RRを介して、スリット膜関連蛋白ZO-1の発現に関与する可能性が示唆された。
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