本研究は、B.rapa自家和合性突然変異体を用いた分子遺伝学的研究により、自家不和合性認識反応に続く分子ネットワーク因子を同定することを目的とする。 まず最初に、5系統突然変異体のS遺伝子を解析したところ、3系統(LVC28、K4、K2)はS遺伝子とは独立した突然変異体、残り2系統はS遺伝子座における突然変異体であることが明らかになった。本研究は認識反応に続く分子ネットワーク因子を同定することを目的とするため、以降はS遺伝子独立型の突然変異体3系統について解析を行った。 LVC28後代F_2集団を用いた遺伝学的解析により、この系統の有する変異遺伝子は劣性1因子であることが推測された。染色体に散在する約120個のSSRマーカーを用い表現型との相関を調べたところ、A1連鎖群のBRMS-096付近に大きな遺伝的作用力(LOD=7.5)が検出され、LVC28系統の有する自家和合性変異遺伝子はA1連鎖群BRMS-096近傍に存在すると推測された。K4後代F_2集団の解析では、複数の変異遺伝子の存在が示唆され、A3連鎖群のBRMS-303、BRMS-330、RA2E11との相関が見出された。本系統は複数の変異遺伝子が推測されるため、この系統の自家和合性変異遺伝子の1つはA3連鎖群BRMS-330近傍に存在し、さらに別の因子が他の領域に存在すると推測された。K4後代F_2集団の解析では、変異遺伝子は劣性1因子であると推測され、遺伝子型と表現型の相関から、変異遺伝子はS遺伝子座と挙動を共にする近傍領域に存在すると推測された。 以上より、B.rapa自家和合性突然変異体を用いた遺伝学的解析により、自家不和合性認識ネットワークに関与する因子が、A1、A3連鎖群とS遺伝子座近傍に存在することを明らかにした。
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