研究課題/領域番号 |
08J08808
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
ヨーロッパ語系文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木内 久美子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2009年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2008年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | サミェル・ベケット / 自伝文学 / 幼児 / フリッツ・マウトナー / ジャンバッティスタ・ヴィーコ / 擬人化 / ジェイムズ・ジョイス / サミュエル・ベケット / アウグスティヌス / シャン=ジャック・ルソー / マルセル・プルースト / 幼児期 / エクリチュール |
研究概要 |
今年度は特にベケットとジョイスとの関係に焦点をあてて「言語の起源」としての「幼児期」の形象を分析した。 四・五月には昨年に引き続き文献学的調査をおこなった。特に「幼児」の形象に焦点を絞り、一九二〇年代前半から三〇年代後半にかけて書かれた両者の草稿・ノート・書簡・著作を比較検討した。その結果、両者がマウトナーの著作『言語批判に寄せて』とヴィーコの『新しい学問』に影響を受けていることが明らかにされた。 六月から九月にかけてはマウトナー・ベケット・ジョイスの関係の解明に取り組んだ。文献学的作業によって「隠喩・擬人化批判」が三者に共通する問題意識として取り出された。マウトナーを参照することによって、ジョイスの『フィネガンズウェイク』言語の中心課題が「擬人化批判」として明確化され、それを「直接的言語」と評したベケットの意図も照射されることとなった。その研究成果の一部は七月に行われた日本サミュエル・ベケット研究会例会にて発表された。 年度の後半ではヴィーコ『新しい学問』を読解し、ベケットとジョイスに共通する「隠喩・擬人化批判」がヴィーコの「幼児」や「子供」の形象に媒介されていることを解明した。ヴィーコは既知の隠喩を未知の対象に適用しようとする隠喩使用を「幼児」や「子供」の形象に代表させている。その能力は未発達であるため認識を獲得できず、むしろ認識に失敗する。これを出発点にしてジョイスとベケットのヴィーコ受容を比較分析し、二者の差異を解明した。この研究経過は第四回表象文化論研究集会において発表された。 以て「幼児」形象の分析を介して、ベケット的なエクリチュールに向かう自伝文学の系譜の起源にヴィーコ的な幼児言語(認識の失敗)とマウトナー的な言語批判(行為としての言語使用)が見出されることとなった。
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