研究概要 |
酸化亜鉛系半導体Zn(Mg,Cd)Oは励起子再結合による高効率な発光材料であり,混晶組成を調整することで紫外から可視(青,緑,赤)全域での発光が可能である.しかしその作製が難しく,光学特性の系統的な評価や量子構造の作製の報告は未だ極僅かである.下記2項目を研究した.Zn(Mg,Cd)O混晶のPLブローデニング(混晶化に伴う発光スペクトルの広がり)は混晶組成ゆらぎと励起子の局在化が大きく影響することを系統的に明らかにした.ウルツ鉱構造Zn(Mg,Cd)O(0<Cd組成<0.6,0<Mg組成0.3)をリモートプラズマ有機金属化学気相堆積(RPE-MOCVD)法で作製し,低温8Kで時間分解フォトルミネセンス(TRPL)測定を行った.PLブローデニングは,統計的な混晶組成のゆらぎの増大傾向と良く一致し,さらに励起子の局在化の混晶組成に対する増大傾向とも一致した.この結果は酸化物半導体の特長である励起子の小さなボーア半径を反映していることが分かった.系統的に明確になった光学特性は今後のZnO系発光デバイスの構造設計の指針を示した. 発光効率を増大させるためにZn_<0.85>Cd_<0.15>O/ZnO多重量子井戸構造(MQWs)を作製し,量子準位間の励起子再結合による高効率な青色PL発光を低温16Kで観測した.ZnCdO井戸層/ZnO障壁層の10周期で構成されるMQWsをRPE-MOCVD法で作製した.ZnCdO井戸層幅の減少に伴うPLピークの高エネルギー側シフトを観測した.このシフト量は計算結果と一致し,井戸層に形成された量子準位間の励起子再結合に伴う発光であることを示した.さらにMQWsの発光寿命は井戸層幅の減少に伴い短時間化した.MQWs井戸(層幅2nm)内での励起子再結合確率がバルクに比べ1.3倍増大していることが分かり,高輝度発光デバイスのフィージビリティーを示した.
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