研究概要 |
地球深部物質の志気会導度は、マントルの組成や地球磁場の形成、伝達過程を議論する上での重要な物性値である。しかし、高圧実験において下部マントル以深の条件での電気伝導度測定は試料サイズが微小であるため困難を伴う。そのため、下部マントル以深条件での物質の電気伝導度測定例はほとんどなかった。申請者はレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いた最下部マントルに相当する温度圧力条件での電気伝導度測定技術を世界で初めて確立した。その技術を用いて平成22年度に以下のことを行った。 「FeOの金属転移」 FeOは単に下部マントルの主要構成鉱物である(Mg,Fe)Oの端成分という意味だけでなく、溶融した鉄からなる外核と固体ケイ酸塩の下部マントル物質が接して反応を起こした場合に重要な役割を演ずる可能性を持つ物質である。FeOは衝撃波実験により約70GPa付近に相転移があることが見いだされ、さらにその相が金属的な性質を持つことが示唆されたが[Knittle and Jeanloz, 1986]、FeOの結晶構造と電気的性質の同時測定が行われた例はなくB8相が金属相であるかどうかは未だ確認されていなかった。 申請者は高温高圧を発生した状態でのFeOの電気抵抗と結晶構造の同時測定を行った。その結果、B8相は温度上昇に伴って電気抵抗が上昇する金属的な性質を持つことを確認した。この研究結果は国際科学雑誌に掲載され、平成22年度に開催された国際学会においてポスター発表された。
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