研究概要 |
一般的に肝臓細胞由来の細胞株において薬物代謝などの肝機能が大きく損なわれていることが知られています。最も肝機能が高いとされている初代培養肝細胞においても、その機能は培養経過とともに急速に失われてしまいます。肝臓細胞は細胞-細胞間相互作用、細胞-マトリクス間相互作用および肝臓特異的転写因子などの様々な因子により空間的に厳密な制御を受けることでその機能を維持しています。そして、体外に取り出された肝細胞はこのネットワークが正常に維持できないために、肝機能が低下するものと考えられます。そこで、生体内環境の空間的な模倣を通じ薬物代謝機能や細胞極性を維持した培養モデルの構築・検討をしました。 細胞接着基質としてPVLAまたはE-カドヘリンを用い、その接着基質上でマウス肝臓初代培養細胞を培養し、肝機能マーカーの発現量を測定しました。また、蛍光免疫染色法を用い極性タンパク質の細胞質内局在を確認しました。コラーゲン及びE-カドヘリン上で培養したマウス肝細胞は大きな伸展がみられる一方で、PVLA上の肝臓細胞は細胞塊となり胆管様の管腔を形成しました。肝機能についてはCollagen上では3日後には発現がなくなってしまったCypla2,Cyp2c29,Cyp2d22,Cyp2e1,Cyp3aの発現がPVLA上またはE-カドヘリン上で培養することでその発現を維持することができました。特に5日後のPVLA上の肝細胞では他の培養条件に比べ強くCyp3aの活性を維持することができました。Real time PCRを用いてこれらの遺伝子の発現量比を測定したところ10倍から100倍の発現量の維持、また、Cyp3a活性は10倍の活性をCypla2,Cyp2c29活性は2-3倍の活性を維持することができました。
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