研究課題
特別研究員奨励費
昨年度までに得られた知見をもとに、酸素空孔を極限まで減らすことによるBi系強誘電体結晶の高機能化を試みた。0.9MPaの高圧酸素下で溶液引き上げ(TSSG)法を用いて、Bi4Ti3O12単結晶を育成することに成功した。フラックス法(大気中、1075℃)により得た結晶の残留分極(Pr)と抗電界(Ec)は、それぞれ38μC/cm2および38kV/cmであったのに対し、TSSG法(高圧酸素下、960℃)で得られた結晶は、極めて矩形性の良いヒステリシス曲線を示し、大きなPr(48μC/cm2)と低いEc(29kV/cm)を示した。リーク電流密度(J)が約2桁減少し、60kV/cmの電界下において10^(-8)A/cm2程度の非常に小さいJが達成された。圧電応答顕微鏡によるドメイン構造観察の結果、得られた結晶ではほぼ完全な分極反転が達成されることが示された。また、高圧酸素下TSSG法によって、高品質な(Bi0.5Na0.5)TiO3単結晶の育成にも成功した。本研究で確立した単結晶育成手法によって、低電界かつ低エネルギー損失で分極反転が可能な高品質Bi系強誘電体結晶の育成を達成した。強誘電体の応用において大きな課題であった特性劣化のメカニズムを明らかにし、格子欠陥制御によるドメインクランピングの解消と分極機能の向上を達成した本研究成果は、ビスマスを始めとする、揮発性元素を含む材料の応用と高機能化に大きく寄与する成果であると思われる。今後は、格子欠陥と強誘電ドメインの相互作用について得た数多くの知見をもとに、より積極的なドメイン構造制御による特性向上へ発展させ、さらなる高機能や新規機能につなげていきたい。
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Key Engineering Materials
巻: CSJ Series Vol.21(印刷中 掲載確定)
Ferroelectrics
巻: 414(印刷中 掲載確定)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 49
Physical Review B 81
Transaction of Materials Research Society of Japan 34(掲載確定(印刷中))
http://www.crm.rcast.u-tokyo.ac.jp/publication.html