研究概要 |
古地磁気記録と宇宙線生成核種の同時性に関する研究 本研究では海底堆積物を対象として,古地磁気強度と宇宙線生成核種生成率の両者を同一試料から求め,過去の太陽活動度の復元をすることを目指している.これまでに,この前段階として,堆積物中における両記録の時間差(深度差)の評価を進めできた.これは,堆積物表層で固定される宇宙線生成核種(この場合はBe-10)に対して,古地磁気記録の獲得深度が異なる可能性があるためである.この問題の解決は,太陽活動度の復元を可能とするだけでなく,氷床コアと堆積物を高精度で対比する際にも不可欠な要素となる. 本研究では赤道太平洋で採取され堆積物のB-M境界(約78万年前)層準を対象とし,相対的古地磁気強度と,東京大学所有のタンデム型加速器質量分析計を用いて求めたBe-10フラックスを直接比較し,獲得深度の評価を行った.この結果,海底堆積物において相対的古地磁気強度とBe-10フラックスの変動記録に明らかなズレが生じることが明らかとなった.こらは古地磁気Lock-in depthと呼ばれる,海底堆積物中で古地磁気記録が獲得されるために必要な深度が存在することを示すものである.この結果は,これまで行われてきた氷床コアと堆積物の対比にある程度の誤差が生じる可能性を示すと共に,既知の地磁気逆転イベントの年代にも修正が必要であることを示唆する.以上の結果は,現在Nature誌に投稿準備中である.
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