本年度の研究目的は、前年度までに開発した抗腫瘍活性天然物である5α-capnellenol類の触媒的不斉合成ルートを、より効率的でフレキシブルな誘導体合成を可能とする合成ルートへ昇華させるべく、その柱となる新規連続型不斉触媒反応の開発に取り組むことであった。しかしながら5α-capnellenol類の触媒的不斉合成そのものが予想以上に困難であったため、引き続き合成研究を行うこととした。 前年度終了の時点で、三環性炭素骨格の構築と、A環へのシクロプロパン環導入、及び2位・5位・8位への酸素官能基の導入は終了していた。そこで本年度は全合成の達成に向けて残された二つの課題である、A環のジメチル基の構築と、10位への酸素官能基の導入を検討した。その結果、C環上のエクソサイクリックオレフインを一級アルコールとして保護すると、A環上のシクロプロパン環の還元的開裂が容易に進行することが明らかとなり、A環のジメチル基の構築を中程度の収率で行うことができた。一方でA環上にジメチル基を構築する前の基質を用いれば、二酸化セレンを用いたアリル位酸化により10位への酸素官能基導入が可能であることが見出されたが、A環上にジメチル基を構築した後の基質では、同様の酸化条件を用いても10位酸素官能基の導入は不可能であった。 現在はジメチル基構築後の基質を用いた新たな10位への酸素官能基導入方法の検討、及び10位への酸素官能基導入とジメチル基構築の変換の順番を入れ替えた合成ルートの検討を行っており、速やかな全合成の完遂を目指している。
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