プロテアソームはこれまで進化的に高度に保存された複合体であると考えられてきた。しかし最近、プロテアソームの機能や構成因子は進化とともに複雑化、多様化したと考えられ始めている。これまでは酵母を用いた遺伝学や生化学的解析からプロテアソームの基本的な機能、性質が解析されてきたが、高等生物、特に哺乳類での解析が進むとともに高等生物、哺乳類特異的サブユニットの発見や機能調節機構が発見されてきた。しかも、これらにおいては酵母での知見が全く適用されない事象も多く存在することから、高等生物によるプロテアソーム機能の解明は近年益々重要な課題となっている。さらに、これまで重要視されていなかったプロテアソームの分解産物においても、免疫や飢餓応答などでの生理学的機能が報告され、プロテアソームの基質分解メカニズムの解明は高次の細胞制御機構の理解に必須であることが示された。これらに加えて、プロテアソーム活性の異常が癌や不要蛋白質の蓄積が原因と考えられる神経変性疾患の増悪化に関与すると考えられていることからも、プロテアソーム活性変換マウスを用いた解析は非常に重要な研究課題である。申請者は、本年度より本研究を実施したが、これまでの報告や予備実験からの情報により、直ちに活性変換を行うための変異導入部位を決定し、遺伝子導入コンストラクトを作製した。また、その後変異導入ES細胞を作製し、マウス胚へのインジェクションにより迅速にキメラマウスの作製に成功した。これらの子孫と様々なcre発現マウスとの掛け合わせにより目的とする全身及び部位特異的な種々のプロテアソーム活性変換マウスを作製することができる。計画は非常に順調に実施され、最も困難なマウス作製段階をほぼ終了させたことは特筆すべきであり、今後の研究の重要なリソースとなると考えられる。
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