研究概要 |
氷期-間氷期サイクルにおける大気二酸化炭素濃度の変動は,古気候学の分野における大問題である.中でも,海洋における炭酸カルシウムの収支のバランスが変化することによって,氷期における大気CO2濃度低下がどの程度説明されうるか,詳細に検討することが重要である。そこで,数値堆積モデルを結合した海洋大循環モデルを用いてシミュレーションを行うことによって,海洋炭素循環における堆積過程の役割と大気中の二酸化炭素濃度への影響を議論することを目的として研究を行った. ブリストル大学(英国・ブリストル)地理学科にVisiting fellowとして在籍し,Andy Ridgwell博士の指導の元に研究遂行上必要不可欠な数値海洋堆積モデルの開発および運用を行うことを目的として出張を実施した.現在(産業革命前)と約2万年前の最終最大氷期(以下では,LGMと呼ぶ)という2つの時代における海洋炭素循環および大気二酸化炭素濃度を数値モデルを用いて再現し,そのメカニズムを理解することが出張者の研究内容である.そのために,以下の作業を行った. ・海洋の物理的条件が大気二酸化炭素濃度におよぼす影響に関して,研究結果を学術雑誌へ投稿した. ・海洋における炭酸カルシウムのバランスをモデル中で取り扱うことを目指し,海底堆積物中での炭酸カルシウムや有機物の埋没・溶解などの化学過程を定量的に予報する数値堆積モデルを,海洋生物化学大循環モデルに結合する作業,およびそれを実際に運用するための作業を進め,動作確認を行った.
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