研究概要 |
本研究では、GaAs/AlAs超格子を試料として、時間分解ポンプ・プローブ分光法により、様々な励起条件(試料への印加電圧およびポンプ光エネルギー)におけるブロッホ振動(BO)ダイナミクスを系統的に測定し、以下の研究成果を得た。1.ポンプ・プローブ分光法を用いた私の以前の研究から、ミニバンド破綻直後の包絡波動関数の弱局在条件において、振動数が従来のBO(v_<BO>=eFD/hの振動数,Fは電場強度、Dは超格子周期)の2倍の電場強度依存性(v_<2BO>=2eFD/h)を有する特異なBOが生じることを明らかにしてきた。その更なる展開として、ポンプ光エネルギー依存性の観点から、特異なBOと従来のBOのコヒーレントダイナミクスの違いに注目した。その結果、特異なBOを生じさせる量子干渉が、従来のBOのものと比べて、ポンプ光エネルギーに極めて敏感であることを見出した。電場変調反射分光法による光学遷移エネルギーの測定より、特異なBOは、様々なワニエ・シュタルク局在状態間の量子干渉が寄与していると予測されることから、得られた実験結果は、特異なBOを引き起こす量子干渉の重ね合わせの程度が、ポンプ光エネルギーにより大きく変化することに起因していると考察した。2.BOに関する研究では、重い正孔励起子によるシュタルク階段遷移に着目し、遷移エネルギーが高い軽い正孔励起子の寄与は考慮しないのが一般的であるが、ポンプ・プローブ分光、および、電場変調反射分光の測定結果から、軽い正孔励起子が関与するコヒーレント現象(シュタルク階段状態特有の励起子量子ビート)が、特定の励起条件において、BOと共存することを見出した。この励起子量子ビートの振動数は、電場強度に対して一定であるが、振動強度は、シュタルク階段遷移の遷移確率を反映して、電場強度で複雑に変化することを明らかにした。
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