上皮細胞の遊走を中心とした胃粘膜損傷の修復(上皮再構築現象)におけるアクアポリン(AQP)の役割について、主としてラット正常胃粘膜上皮細胞株RGM1を用い、他種の細胞の影響を受けないin vitro条件下において検討を行い、以下のことを明らかにした。 これまでに細胞遊走との関連が報告されているAQPアイソフォームのうち、RGM1細胞はAQP1を発現していた。AQPを非選択的に阻害する水銀イオン(HgCl_2)は濃度依存的に胃粘膜損傷の修復を抑制した。AQP1をRNA干渉によりノックダウンしたRGM1細胞では明らかな細胞遊走の遅延が観察され、上皮の再構築は著明に抑制された。また、AQP1をノックダウンしたRGM1細胞では遊走細胞の先端におけるラメリポディアの形成が明らかに減少していた。以上のことから、AQP1は上皮細胞の遊走を中心とした胃粘膜修復において重要な役割を果たしていることを薬理学的および遺伝学的に明らかにし、AQP1は恐らくラメリポディアの形成に必要な細胞先端におけるアクチン線維の進展に関与しているものと推察された。 本研究により得られた結果は、胃粘膜の恒常性維持に不可欠である上皮再構築の解明に貢献するものであると考える。また、in vitroによるデータではあるが種々の消化管疾患の病態にAQPが関与する可能性を示唆するものであり、興味深い知見であると思われる。 本研究の成果は現在、論文投稿準備中である。
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