研究課題/領域番号 |
08NP0601
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研究種目 |
創成的基礎研究費
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西塚 泰美 神戸大学, 学長 (10025546)
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研究分担者 |
横山 光宏 神戸大学, 医学部, 教授 (40135794)
淀井 淳司 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80108993)
福井 泰久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00181248)
山村 博平 神戸大学, 医学部, 教授 (90030882)
井上 圭三 東京大学, 薬学部, 教授 (30072937)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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キーワード | ホスホリパーゼA / ホスホリパーゼC / ホスホリパーゼD / チロシンキナーゼ / 低分子量G蛋白質 / ストレス / ホスファチジルイノシトール3キナーゼ / 核局在化シグナル |
研究概要 |
細胞内情報伝達機構網の詳細の解明をめざし総括班および6研究班を組織した。総括班は研究計画の統合推進を担当し、全体会議および国際シンポジウムの開催により研究者間の円滑な交流をはかるとともに中枢神経におけるプロテインキナーゼC(PKC)の役割や植物の情報伝達機構の研究組織を強化することを検討した。6研究班は以下の成果を収めた。 1.研究班1:情報伝達に関するリン脂質分解酵素として新たに、酸化リン脂質選択的ホスホリパーゼA2(PAF-AHイソフォームII型)、ホスファチジルセリン特異的ホスホリパーゼA1のクローニングを行い、また発生過程の脳に特異的に発現するPAF分解酵素(PAF-AHイソフォームI型)の高次構造が三量体G蛋白質と酷似していることを示した。ラットのホスホリパーゼD1,D2遺伝子のクローニングをほぼ完成し,HL-60細胞における膜結合性ホスホリパーゼDがRho、ARFとPKCによって相乗的に活性化される発見し、また、CD14を介するLPS刺激伝達にホスホリパーゼDが関与すること、およびクルクミンがホスホリパーゼD活性を阻害する事を見い出した。膜リン脂質、特にホスファチジルエタノールアミンの動態がアクチンフィラメントの再構築に関わることを発見した。情報伝達の末端にあるサイクロオキシゲナーゼの分化に伴う発現誘導を血小板前駆細胞について検討した。 2.研究班2:非受容体型チロシンキナーゼSykが活性酸素によって強く活性化され、過酸化水素による細胞内カルシウム増加やJNKの活性化などの生理的応答はSykに依存することを明らかにした。核内にホスホリパーゼCδが存在することを見い出し、また、核内ではホスホリパーゼCの基質であるホスファチジルイノシトール4、5二リン酸(PIP2)がヒストンに結合しており、PIP2の結合はヒストンによる転写阻害を抑制し、ヒストンがPKCによりリン酸化を受けることによりPIP2とヒストンの結合が減少することから、核内にもイノシトールリン脂質情報伝達系が存在し転写制御に関与していることが示唆された。記憶などに関与するNMDA受容体はそのチャネル活性がチロシン燐酸化により制御されることが知られているが、NMDA受容体とFynの共発現系培養細胞とFyn欠損マウスの脳抽出液を用い、FynチロシンキナーゼがNMDA受容体のチロシンリン酸化を引き起こすことを
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強く示唆する結果を得た。低分子量G蛋白質Rhoの標的としてPKN、Rhoキナーゼ、ミオシンホスファターゼのミオシン結合サブユニット(MBS)を見い出し、Rhoキナーゼがミオシンを直接リン酸化すると共にMBSをリン酸化してホスファターゼの活性を抑制すること、およびRhoキナーゼがRhoの下流でアクチンストレスファイバーの形成と接着斑の形成を制御することを明らかにした。 3.研究班3:ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3キナーゼ)の下流の標的として細胞増殖因子により活性化されることが知られているRACプロテインキナーゼが、PI3キナーゼを介さずに熱ショックや高浸透圧といったストレスにより活性化を受けることを見い出した。PI3キナーゼ経路の代表的な下流因子、p70S6キナーゼの活性化機構にaPKCλが関与していることを明らかにし、また、aPKCλ結合蛋白質としてPDZドメインを有する新規蛋白質を見い出し、この結合蛋白質が線虫の卵不等分裂に関わる遺伝子のほ乳類ホモログであることを示した。PKNが中間径フィラメントであるニューロフィラメント、ビメンチンおよびαアクチニンと直接結合し、PKNはリン酸化により中間径フィラメントの重合、脱重合を制御していることを示した。また、PKNが熱などのストレスにより速やかに核に移行することを見い出し、PKNが遺伝子発現制御を含む核内機能に関与することが示唆された。大腸癌の癌抑制遺伝子APCの産物がショウジョウバエ癌抑制遺伝子DLGのヒトホモログ産物と複合体を形成していることを見い出し、これらの癌抑制遺伝子産物のリン酸化の検討により、DLG蛋白質はG2期からM期にかけてリン酸化が増大し、このリン酸化にはCDC2が関与していることが示唆された。 4.研究班4:細胞の分化増殖に関わる情報伝達と転写因子の核移行について検討し、以下の成果を得た。PKCη分子種によるケラチノサイト分化についてトランスジェニックマウスを用いて検討し、皮膚、食道、角膜など扁平上皮に分化の異常を見い出し、η分子種の中心的役割を確認した。へパリン結合性EGF様増殖因子のジャックスタクリン活性とパラクリン活性をラット肝癌細胞株を用いて比較検討し、ジャクスタクリン活性はサバイバル因子として機能することを示した。また、活性型P13キナーゼを細胞に発現させることによりP13キナーゼの細胞骨格の組織化、小包輸送への関与を示唆した。転写因子JunとFosの核輸送を調べ、両者は二量体としてJunの核局在配列を利用して核輸送されることを明らかにし、核局在配列の強弱の組合わせが遺伝子発現に関与することを示唆し、また、インターフェロンγの刺激に依存したStat1分子の核内移行を解析し、低分子量G蛋白質Ran、核膜孔ターゲティング複合体構成因子であるimportinが必要であることを明らかにした。 5.研究班5:微小管形成に関わるplk分子がM期開始よりリン酸化を受け、細胞分裂の調節に関わっていることを示し、GO期が維持できるプロB細胞でのみ発現が見られる遺伝子のクローニングを進行している。抗Fasモノクローナル抗体で刺激後活性化される34kDのプロテインキナーゼを見い出し、さらにこのプロテインキナーゼと共精製されるチオレドキシン(TRX)様構造を持つ蛋白質を見い出した。TRX会合蛋白質の同定に成功し、TRXの核移行、還元物質REF-1との直接結合を明らかにし、TRXノックアウトマウスの解析を進め、TRX遺伝子の発現が胚の初期分化に必須であることを証明した。さらに、転写因子PEBP2/AML1のDNA結合能がレドックス制御下にあることを示した。前年度までに樹立したNKT細胞を用いて、これらを特異的に認識するモノクローナル抗体を作製し、自己免疫疾患モデルマウス、妊娠マウスでのNKT細胞の役割の解析を進めた。 6.研究班6:ウシ大動脈内皮型-酸化窒素合成酵素(beNOS)のcDNAをエンドセリン-1プロモーター下流に組み込み、beNOS過剰発現トランスジェニックマウスの作成を行ない、beNOSのmRNAおよび蛋白質が大動脈をはじめ、心、肺等の主要臓器の血管内皮細胞に発現されていることを認めた。肺動脈平滑筋において、エンドセリン-1などによる[Ca2+]i非依存性収縮は持続性であり、PKC阻害薬で抑制されるがMLCK阻害薬では抑制されないことを示し、また血管平滑筋にはCa2+感受性に関与するRho associated kinaseが発現することを明らかにした。ウシ大動脈内皮細胞においてリゾPCにより130kD、190kDの蛋白質がチロシンリン酸化され、この130kDはRECAM-1であることことが判明した。またリゾPCにより内皮細胞膜表面のRECAM-1がチロシンリン酸化されることが明かになった。分裂酵母系を用いて、PP2Bと機能的に関連した新たなMAPキナーゼホモログであるPmk1を発見した。また、PP2Bが長期増強現象や血球系の分化に関与していることを明かにした。 隠す
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