研究課題/領域番号 |
09041195
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究分野 |
人類遺伝学
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
田島 和雄 愛知県がんセンター, 疫学部, 部長 (30150212)
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研究分担者 |
NUNES Lautar 北カトリック大学, 教授
CARTIER Luis チリ大学, 医学部, 教授
宝来 聰 (宝来 聡) 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (40126157)
渡辺 英伸 新潟大学, 医学部, 教授 (70037381)
園田 俊郎 鹿児島大学, 医学部, 教授 (40036463)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
8,900千円 (直接経費: 8,900千円)
1998年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1997年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 日本人 / アンデス先住民族 / ミイラ / HTLV / ヒトβグロビン / 核DNA / ミトコンドリアDNA / 民族疫学 / HLA |
研究概要 |
本研究は、十年前に南米における国際学術研究として開始したHTLVの調査から、研究目的や調査対象が著しく拡大し、この数年間ではアンデス先住民族と日本民族の遺伝学的類似性に焦点をあてた学際的な人類遺伝学的研究にまで展開した。 第一に、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の流行分布から中南米の先住民族は二群に大別される。つまり、北部のカリブ海地域、オリノコ川流域、アマゾン流域、南部のパタゴニア地域などの低地に幅広く定着している先住民族は2型を保有しているが、高地のアンデス先住民族は日本人と同じ1型を保有していた。第二に、動物の免疫監視機構に重要な役割を果たしているリンパ球抗原(HLA)DR-DQ遺伝子の塩基配列によるハプロタイプの類似性解析から、アンデス先住民族の中には九州西南部に分布する日本人と全く同型のものが多く分布するが、他全域の先住民族(上記のHTLVの2型を保有)では類似型はほとんど検出されない。むしろ、両者は全く異なった遺伝的背景を呈していた。このような知見から、アンデス先住民族が日本列島に定着したアジアの先住民族と人類遺伝学的に近縁関係にあるという仮説が立証できた。 一方、われわれは、昨年度からアンデス地域に眠り続けてきた自然ミイラを対象とした遺伝疫学的研究を過去4年間続けていくことにより、ウイルス学的、人類遺伝学的、考古学的に重要な新知見を得ることができた。ミイラの骨や骨髄のDNAを解析することにより、チリ北部アタカマ高原のミイラ(約千五百年前のティワナク)からヒトβグロビン遺伝子、およびHTLVの1型プロウイルス遺伝子(pX領域の158bp)の抽出に成功した。両遺伝子についてはクローニングすることにより塩基配列を決定し、ヒトβグロビン遺伝子には全く変位がみられず、pX領域158bpの遺伝子では現存する先住民族で二つの型(日本人型と1塩基の変異型)に大別され、ミイラのそれは日本人のウイルスと同型であった。さらに、ミトコンドリア遺伝子の塩基配列から現存する先住民族とミイラが類似した分布様式を示すことも明らかになった。 これらの研究成果は、日本人とアンデス先住民族の人類学的つながりや、南米アンデスに現存する先住民族と新大陸発見以前に居住していた先住民族を科学的に結びつける新知見として、医学的のみならず人類遺伝学的、考古学的に極めて重要な発見といえる。
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