研究分担者 |
ANANDAKUMAR Kerala州立大学, 医学部・外科, 教授
HARIHARAN M. Kerala州立大学, 医学部・内科, 教授
森 満 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (50175634)
石川 治 大阪府立成人病センター, 外科, 室長
堤 雅弘 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00207416)
ANANDAKUMAR エム Kerala州立大学, 医学部・内科, 教授
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研究概要 |
【目的】インド南部の風土病である慢性石灰化膵炎(chronic calcific pancreatitis of the tropics;CCPT)に併発する膵癌の原因を、疫学的、病理学的並びに臨床的に究明し、その成果をもとに予防と治療対策を見出すことを目的とした。【方法】 トリヴァンドラム医科大学において1992年から1998年までに治療を受けたCCPT症例、CCPT合併膵管癌(pancreatic duct adenocarcinoma:PDA)症例、および、CCPTを合併しないPDA症例を研究対象とし、各群の症例数に対応する正常人を対象として選択して、疫学的、臨床的、および病理学的に相互間で合意されたプロトコールのもとに検索した。【結果】(1.疫学的解析)CCPT患者57人,CCPT合併膵癌患者32人,およびCCPTを伴わない膵癌患者111人,とそれぞれの対照健常人200人に対する面接調査は終了した。その結果,cassava摂取とCCPTおよびCCPT合併膵癌との関連性が示唆され,喫煙,コーヒーや紅茶の飲用,野菜や果物を摂取しないこととCCPTを伴わない膵癌との関連性が判明し,その一部はすでにproof readingを終了し近く論文として掲載される予定である。(2.臨床的解析)対象症例について以下の4群を作製した。第1群はCCPTで68症例,第2群はPDA with CCPTで38例,第3群はPDA aloneで139例,第4群は年令をマッチさせた対象群で245例であった。年齢分布は性別の男女比は,第1群では3対1,第2群では1.6対1,第3群では1.3対1であった。好発年齢は,第1群では30歳代,第2群では40歳代,第3群では50歳と60歳代であった。第2群のCCPT合併膵癌症例は若年性に20歳代で7人におよんだ。結石は膵管内び慢性に存在し,結石の存在部位と癌の発生部位に相関はみられなかったが,第3群の癌は,膵頭部に好発していた。肝転移は第3群では139例中51例にみられたが,第2群では38例中わずか3例にみられたのみであった。組織学的に第2詳にみられた癌は低分化型管状腺癌であった。第2群では低頻度ながらp53の変異がexon7,8,9とK-rasの変異がexonlに検出された。(3.病理的解析)膵切除術を受けたCCPT13例について膵管上皮の変化を組織学的に模索した。その結果,膵管内のprotein plugsは92%にみられ,前癌性変化としてpyloricgland metaplasiaが69.2%と最も高頻度にみられ,CCPTを母地として発生するPDAの前癌性病変としてこのmetaplasiaの重要性が示唆された。【考察】第2群におけるPDAは第3群のそれよりも若年性に発生し、CCPT症例から早期膵癌の発見が重要であることが示唆された。cassavaの表皮に含まれるcyanogcnic glycosidesによるcyanide poisoning,cassavaの成分が低タンパク高炭水化物であることによる影響などが、cassava摂取と第2群や第3群との関連性の機序として考えられる。第3群に関しては、欧米や日本などで示唆されている危険因子との共通性がうかがえた。
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