研究分担者 |
嶽崎 俊郎 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (50227013)
長尾 徹 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (90261007)
池田 憲昭 国立国際医療センター, 地域医療研究室, 研究員 (30150791)
RAZAT I. A. マラヤ大学, 歯学部, 教授
伊藤 宜則 藤田学園保健衛生大学, 衛生学部, 教授 (50087665)
RAZAT I.A. マラヤ大学, 歯学部, 教授
ZAIN R.B. マラヤ大学, 歯学部口腔病理学教室, 助教授
宮崎 秀夫 新潟大学, 歯学部予防歯科学講座, 教授 (00157629)
|
研究概要 |
研究は,マレーシアにおいて口腔癌の発生頻度がタミル人に次いで高い原住民のブミプトラ(サラワク州)を対象として同様の患者,対照の手法を用いて,口腔癌の発症に及ぼす栄養の影響についてタミル人と比較して,異民族間における口腔癌のリスク要因と防護要因を検討することをの目的に行われた。 口腔癌・前癌病変が高率にみられるカレイ島の椰子園農場と椰子油精製工場の労働者(タミル人)423名,クラン地方におけるタミル人138名,およびサラワク州におけるその他のブミプトラ(イバン族・ビダユー族)613名を対象にフィールド調査(口腔粘膜健診,生活習慣,学歴,喫煙・飲酒・ビンロー咀嚼習慣歴についての面接・聞き取り調査,栄養・食餌品目調査),および,末梢血中のRetinol,∂-tocophelor/Vitamin E,Zeaxanthin/Lutein,Cryptoxanthin,Lycopene,∂-carotene,β-caroteneの定量を行った。調査対象者の24.2%が白板症(前癌病変)を有し,69.8%が健常者であり,病変を持つグループの平均年齢はタミル人56.5歳,ブミプトラ47.9歳であった。ロジスティック回帰分析によるタミル人における口腔癌,前癌病変発生リスク要因を分析した結果,タミル人では基本属性,生活習慣,血清分析値の各変数のうち,口腔癌,前癌病変発生に最も寄与したのはびんろう咀嚼習慣(オッズ比:34)であった。さらに,末梢血中の低い∂カロチンレベルは約1.3倍高い疾患発症リスクを認めた。ブミプトラについても類似した結果を得た。すなわち,口腔癌,前癌病変を有すグループの全員がびんろう咀嚼習慣を持ち,他に,アルコール飲用はオッズ比5,∂カロチンレベルはオッズ比1.5を示した。 びんろう咀嚼習慣が口腔癌発症のリスク要因であることは広く知られている。しかし、その習慣を持つ民族は熱帯・亜熱帯地域に広く分布しているのにもかかわらず,強い地域・民族特異性を示す。本研究ではびんろう咀嚼に加え,カロテノイドの欠乏(血清中の低い濃度)が口腔癌・前癌病変の発症に寄与することが示唆された。
|