研究概要 |
コンビナトリアルケミストリーは機能分子探索の効率を最大限に高めるための方法論であり,糖類の分子機能ならびに有機金属錯体による触媒反応の探索への適用を検討した。 1.人工抗体ライブラリーとは特定の化合物を結合させることを目的として構築されたペプチド化合物群である。NestlerならびにStillはこれまでに種々の人工抗体ライブラリーを構築している。今回Nestlerはこれを発展させ,様々な分子を捉える分子ピンセットのライブラリーを構築した。 2.生物学的に重要な糖鎖として,グリコサミノグリカンのリンカー部に存在する4糖の蛍光標識体GlcA(1-3)Cal(1-3)Gal(1-4)Xyl-MUを調製し[(MU=メチルウンベリフェリル(MU)](深瀬),分子ピンセットのライブラリーとの結合実験を行なった結果,4糖に選択的に結合する分子ピンセットの候補を何種類か見出した(深瀬,Nestler)。 3.lipidAはグルコサミンβ(1-6)ジサッカリド構造を基本構造とし,2,2',3,3'位に脂肪酸が結合し,1位と4'位にリン酸基が結合した複雑構造の複合糖質で様々な生物活性を示す。lipidAライブラリーの調製に適用可能な合成経路を液相で検討し,効率的な新合成経路を開発した(深瀬)。現在,lipidAライブラリーを構築するために,固相でのより効率的な合成を検討中である。 4.高機能触媒のコンビナトリアル探索のための方法論開発を行った。既にリ-ドとなるべき幾つかの錯体触媒のデザインは完成し,固相担持とそれに伴い可能となる固相上での触媒ライブラリー構築の予備実験を開始した。特に水中での高度な触媒機能の発現を目指し,錯体触媒ライブラリー構築を展開し,水中不斉触媒を見出した(魚住)。
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