研究概要 |
本年度は,球面状の導体キャビティで形成したコンフォーマルラジアルラインスロットアンテナに関し,導波路外部のダイアディクグリーン関数を導出した.さらに,これを用いてアンテナの形状パラメタと指向性との関係を数値シミュレーションにより明らかにして設計資料を得た.さらに試作実験によりほぼ所望の円偏波円錐ビーム放射を確認した. 導体球外部領域のダイアディクグリーン関数を固有モード展開により導出した.極座標系において,半径方向が球ベッセル関数,方位角方向が三角関数,仰角方向がルジャンドル多項式で表される固有モード関数をマックスウェル方程式の斉次解として求め,次に点波源により生成される電磁界を固有モードの和として表し,境界条件より各固有モードの係数を求めた. 次に,求めたダイアディクグリーン関数を用いて,コンフォーマルアンテナの放射指向性の形状パラメタ依存性を調べた.隣接するスロットが等振幅・直交位相で励振されているという理想的な仮定を置いた場合に,球半径およびスロット位置による指向性の変化を詳細に調べ,指向性設計の基礎資料を得た. さらに,ビーム仰角が30°となるコンフォーマルアンテナを試作して,指向性の測定実験を行った.スロット励振が理想的でないために生じる軸比の劣化,球面の一部を切り出したために生じる回折波の影響が観測されたが,概ね理論計算通りの特性を得ており,ビーム仰角30°で方位角方向に一様な理想的な円錐ビームが観測された. 今後は,アンテナ内部および外部の境界値問題を定式化し,スロット結合および入カインピーダンスを考慮した設計法を確立する予定であり,科研費終了後も共同研究は継続して実施する.
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