研究概要 |
本調査研究では,ある特定の非線形デバイスと時間遅れ要素からなるカオスユニットを相互結合して得られる多次元の非線形ダイナミカルシステムで,過去のいくつかの関連ある事柄を連鎖的に想起する人間の脳のような動きを呈する連想メモリの可能性について,そのハードウェアシステムの集積化を念頭において調べた. 調査研究の主な成果について以下に述べる. 1. カオスユニットの設計 (1) カオスユニットはある特定の非線形デバイスと時間遅れ要素によって構成される.多くのシミュレーションから,効果的なカオス遍歴をつくり出せる写像関数は,飽和逆N型の関数であることが分かった. (2) 巡回セールスマン問題(TSP)のようなNP完全問題を解くための相互結合型ネットワークを構成するカオスユニットとしては,飽和N型の関数がよいことが分かった.このようなカオスユニットを相互結合し,重み係数に乗じたゲインを0に近い値から徐々に増大させると,システムは解を与える状態に必ず収束する. (3) 各カオスユニットの内部値(入力部でいくつかの入力に重み係数を乗じて総和を求めたもの)が,検出可能な類似性測度として有用であることが分かった. 2. 集積回路化の適性 (1) 本調査研究の結果,カオスユニットの構造は,重み付き加算回路,非線形関数回路,遅延回路の3つからなり,いずれも比較的簡単な回路で構成でき,集積回路化に適していることが分かった. (2) 本調査研究で求めた相互結合型のカオスネットワークは,デバイスの寸法や特性のばらつき,抵抗値のばらつき等に対して動的挙動が極めて安定しており,集積回路化に適していることが分かった.
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