研究概要 |
土木構造物の多くが自然環境に曝されており,必然的に気象変動の影響を受けることになる.自然界の現象をモデル化し,構造物への影響を調べるのが本研究の主目的である.本研究では特に,気象因子が構造内部の温度変化にどのように関わりを持っているかに注目している.そのため,構造物とそれを取り巻く自然環境との境界面における熱収支のモデルを確立することが重要である. 構造物の温度に影響する外的因子として,気温,太陽からの輻射熱,風速,水分の蒸発散などの気象作用などがあり,構造物とそれを支持している地盤の密度,比熱,熱伝導率に加え,熱源がある場合にはそれを考慮する必要がある.一番複雑な現象は,構造物と自然環境との界面の条件である.構造物と大気の間の温度差による対流熱伝達,太陽および大気からの全天日射量,構造物から大気へ,また逆に大気から構造物へ移動する赤外放射量,さらに,構造物の表面では雨水などの蒸発散による気化熱の影響も考えられる.これらの因子を組み込んだ境界面のモデル化を行い,伝熱解析をすると構造内部の温度変化を推定することができる. ここで問題となるのは,自然環境との境界モデルの検証である.本研究と並行して民間企業との共同研究を組み,屋外で構造物と気象因子の相互作用の観測を行うため実験を行っている.境界モデルで必要な上向きと下向きの全天日射量,上向きと下向きの赤外放射量,露点温度,風速,コンクリート躯体内部の温度変化等を観測している.これらに実験を通して,季節の変化,天候の変化にも対処できる境界モデルの構築を目指している.これまでの研究の成果を総合すると,雨天時を除きかなり精度良く構造内部の温度変化を追跡できることが明らかになった.
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