研究課題
特別推進研究
生物のように効率的でしなやかな運動システムを作製するためには、まず生物類似の物質を開発し、それに運動機能を付与することが必須である。この観点から本特別推進研究「高分子ゲルを用いた生物様運動素子の創製」を展開した主な目的・計画は以下の通りであり、各項目に関しそれぞれ以下のような成果を得た。(1)高分子ゲルを用いてしなやかに運動する高効率運動素子を設計・作製する。(2)ゲルの運動の特性を明らかにする。(3)生体適合型ソフトアクチュエータを開発する。(1)高分子ゲルを用いて、世界に先駆けて「人工尺取虫」、「形状記憶ゲル」「ケミカルモーター」、「人工活膜筋」、「人工心臓プロトタイプ」等多彩なソフトウェットマシーンを次々に創製し、世界を先導的にリードしてきた。これが刺激となって、高分子ゲルに2重網目構造(ダブルネットワーク)という概念を導入することにより、関節軟骨や腱、靭帯に匹敵する超高強度ゲル(圧縮強度10^7Pa以上)の創製に成功した。これによって、始めて、様々な厳しい生体条件に耐える生体埋め込み型人工筋肉の実現の可能性が出現し、本研究申請の実現となっている。現在ではゲルを用いたアクチュエータの研究は欧米各国を中心に世界的重要課題になり、応用展開が計られている。(2)ゲルマシーンが固体マシーンと根本的に異なる運動様式で作動すること、すなわちしなやかな運動能力、化学エネルギーの直接変換による運動、摩擦係数10^<-4>という超低摩擦等々の特徴を有していることを発見し、これらが高分子鎖と水との相互作用によって、支配されることを理論実験解析的に明らかにした。この運動機構は、関節、眼球、腸や心臓など生物運動のゆるところで機能する生物運動の基本になっていると考えられ、この発見が、人工関節、人工肛門を創製する重要な動機となっている。(3)筋肉蛋白の自己組織化ゲル形成によって速さ1μm/sで動く、大きさ50μmから10mmのバイオゲルマシーンを世界に先駆けて創製した。これは、生体適合性・生体埋め込み型ソフトアクチュエータによる医療用マニピュレーションへの道を開くものである。
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