研究概要 |
本研究は九州文化史研究所所蔵の琉球関係史料の基礎的研究を目的とするもので、平成8年度は研究分担者とともに文化史研究所において石本家文書をはじめとして,島原加津佐の元山文庫史料・長崎平戸の古賀家文書・長沼文庫史料(故長沼賢海九大教授収集資料)等々の検索を行い,41点の史料のマイクロ撮影作業を完了した。関連文書の中心をなすのは石本家文書であるが,同家の文書は薩摩藩との往復書簡,仕切状の類など一紙文書が大部分であるため,従来その内容の確定作業が行われてこなかった。本研究ではまずそれらを読み起こし,詳細な目録のデータベース化に取り組んだ。ついで平成9年度は研究分担者の真栄平が,石本家文書の琉球産物商法年継ニ付御手形を以被仰渡候趣評議仕申上候書付』『文政七年未十月より十二月迄薩州表ニ而差出候書面之控』『丑八月より相廻ル琉産一件』など主要史料の筆耕を行い,これらの史料が広く利用できるようにした。また上原は松木文庫中の『嘉永六年丑七月払琉球産物切手本帳』『安政二年卯十一月卯冬琉球産物切本帳』のフォトCD化をはかるとともに,ハワイ大学の宝玲文庫や長崎の落札商人村上家に存在する同種の史料との比較検討を行い,かつその性格分析を試みた。その結果,これらの史料は宝玲文庫のものとともに,村上家から散逸した史料の一部であること,そして落札商人の「見帳」は手本帳とともに,商品の数量や商人名,入札高,商品代銀高など,末端における琉球産物の取引きに関する情報を多く有する史料であることが明らかになった。
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