研究概要 |
本研究は、英語を母語とする同一科学者による同じタイトルの自然科学分野の口頭発表と論文を収集したテキストデータベース(コーパス)の構築と公開をめざしている。本コーパスは、自然科学分野について話す際と書く際の英語の相違及び相違の要因を探る目的に最も適した特殊コーパスといえる。データ収集方法は、自然科学分野の国際会議で録音した口頭発表を文字化し、論文は口頭発表と同一著者、同一タイトルのものを会議のプロシ-ディングズから抜き出しOCRで読み、機械可読形式にする。コーパス構築・公開は、昨年と本年を含む3年計画である。口頭発表の文字化には特に時間を要するが、本年度までに口頭発表8件(計約34,000語)のテープ起こしが完了している。このテキスト量はLondoh-Lundコーパスの1ジャンルである「講演」(計約35,000語)に匹敵する。来年度のコーパス公開をめざして、既存のテキストの情報付与形式を調査・整理した(齋藤他編『英語コーパス言語学』第2章)。また、コーパスとして各テキストの全文を公開するために、各著者の承諾を求める作業を始め、著者の承諾を得られたもののうち1対のテキスト全文を公開した(日本英語コミュニケーション学会大会ハンドアウト)。さらに、本コーパスの意義を明確にするために、そのいくつかのテキストを利用してディスコース分析を行っている。昨年度は、4対の論文と口頭発表について、ディスコースの枠組みをつくる主要な手段である主題構成と主題中の結束手段を比較し、その相違が説明できるディスコース形成モデルを提示した。本年度は、伝達内容がどのように構成されているかを中心に比較した。その結果、口頭発表には、「後方付加的」「主張暖和的」傾向が見られることがわかった。それらの相違もディスコース形成モデルのなかでうまく説明できた。
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