研究概要 |
平成9年度ではアンケート調査の実施によって都市における地域社会の再建に関わる行政,住民と企業の動きを把握し,三者の間の相互期待と相互影響の実態を究明しながら,理論的構築をはじめた.その結果を「Non-urbanism的都市化推進のメカニズムの分析---中国を例として---」公表した.この論文では,改革開放までの中国の都市化をnon-urbanismと定義し,システム分析の方法で,中国のnon-urbanism的な都市化現象を維持するメカニズムを分析した.つまり,non-urbanism的都市化のメカニズムの形成にとって,民衆による政治的支持と生産力の支持は非常に重要である.一党支配の政治体制は,産業優先のための資源の配分と資本蓄積を達成した.同時に計画経済により,企業が多機能を与えられ,地域社会や個人までの生活様式と消費水準をコンドロールする.個人は一次元的社会的編成により,政治的支配のメカニズムが生まれた.また,生産力の支持においては政治統制の手段により,民衆の動員を行い,個人は職場に労働力を提供し,職場は計画された通りに政治体制を維持する生産力を提供する.このようにして,Non-urbanism的都市化現象が生まれたのである. 本年度のアンケート調査を通じて,従来の都市システムが崩壊してから地域社会再建可能性に関して次のように3点が研究発見として挙げられる.(1)国家権力は職場や居民委員会を通じて都市社会をコントロールした体制がほぼ全面的に崩れた.地域社会においては行政と住民の二次元的な構造が築されはじめた.(2)「社区」(community)という名称の導入されているが,そのconceptがまた不明確である.(3)地域社会の再建に関わる財政は行政の予算よりも企業に頼っている.これに関する細密な解析は平成10年度で行う.
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