研究課題/領域番号 |
09207104
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
河野 守夫 神戸市外国語大学, 教授 (20073364)
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研究分担者 |
滝澤 修 郵政省通信総合研究所, 研究官
柏木 敏宏 協和会病院, 言語療法科, 科長
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1997年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 乳児の音声知覚能力 / 音声知覚の発達的変化 / 2つの音声言語処理機構 / 言語障害者の音声弁別能力 / 音声言語処理機構の階層性 / holisticとanalytic / 日本人の / r-l / 弁別 / phonetic perceptionとphonological perception |
研究概要 |
Best et al.,(1988)のConditioned eye fixation paradigmを用いて、英語の/r-l/,/w-y/についての日本人乳幼児の弁別能力の実態を調査して、次の結果を得た。生後6〜8か月の幼児(年少グループ)は、/r-l/の対立を弁別することができるが、10〜12か月(年長グループ)になるとその弁別能力を失う。一方、/w-y/については両グループとも弁別が可能であった。そのようなことが起こる原因として、次の仮説を立てた。 1)人間には全体的知覚と分析的知覚を行う2種類の音声処理機構がある。これらは生得的なものだと考えられる言語心理学的証拠がある。2)両者は互いに階層構造をなし、前者が下部構造を、後者が上部構造を形成する。3)全体的音声処理機構はテンポの速い単調なリズムしか生成できないが、高度な音声弁別能力を持ち合わせている。例えば、多様で複雑なリズム型の弁別ができる。4)分析的知覚処理が進むと全体的知覚処理機構の作業を抑制するが、決して全体的知覚機構を破壊することはない。5)従って、分析的知覚の制御がとれると、全体的知覚能力が自然に復元する。(以上、文部省重点領域研究「認知と言語の発達」で行った研究成果) これを乳幼児の音声知覚の発達的変化に当てはめると次のようになる。 生後間もない乳幼児は全体的知覚機構によって音声を知覚する(phonetic perception)が、やがて母国語の音韻構造を獲得する過程で分析的知覚機構の働きの結果、日本語の音韻規則が習得されると、それに沿った知覚をするようになり(phonological perception)、ありのままに/r-l/をきくという全体的知覚が抑制されて/r-l/の聞き分けが難しくなる。しかし、分析的知覚の優位性がなくなると全体的知覚機構が再び活性化し、/r-l/の識別が可能になる。この仮説に基づいて、50〜60歳の健常者20名と同年齢層の左脳に損傷のある言語障害者10名(右脳損傷なし)に、乳幼児に使用したのと同じ刺激を用いて音声弁別実験を行った。結果は、/r-l/については、健常者の正答率が平均10%、S.D.4.3、言語障害者は35.0、S.D.6.0であった。/w-y/については両グループとも弁別は良好であった。
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