本研究は、幼児が縦割り保育の幼稚園生活の中で、どのような<心の理解>に関する行動を示すかを、幼稚園の1つのクラスの年少児が年長児になるまでの3年間にわたり、毎週1回定期的に参加観察を行うものであり、その初年度にあたる。 被験児は、京都市内の私立K幼稚園U組の園児全員の26人を対象とした。内訳は、年長児11人(男児7人、女児4人)、年中児7人(男児2人、女児5人)、年少児(男児5人、女児3人)である。この幼稚園では、モンテッソ-リ・メソッドにより保育が行われ、1つのクラスに年齢の異なる子どもたちが入り交じる「縦割り保育」を行っている。 学期の期間、毎週木曜日の午前中に園児の行動を記録した。観察の第一期(1997年7月〜1998年3月)は、自然な形でクラスに溶け込むために、3名の観察者が毎回2人以上で観察することを原則として、U組に入って各自のフィールド・ノートに観察した行動を記録するという方法をとった(MDで録音も行う)。3人の観察者が記録したエピソードは、キーワードで検索可能になるように、共通するフォーマットでデータ・ベース化した。 現在までの分析結果の要点は、次の通りである。 (1)年少組(3歳台)の会話の中にも<心の理解>を前提とする行動が観察された。 (2)年長組は、様々な場面で年少児に対する援助的なはたらきかけを示した。 (3)同年齢間よりも異年齢間の相互交渉の場面において<心の理解>の表れ方の多様性が観察された。 今後の課題として、観察者が新たに用意した課題を巡って、幼児同士の相互交渉がどのように展開するについて、年齢の組み合わせの観点から検討していく予定である。
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