研究概要 |
「会話の成立における語用論知識の発達的検討」にあたり、人が発話解釈にあたって何を行っているのかを語用論、特に関連性理論からみていくために、これまでの筆者の観察データーを見直して、語用論知識の発達の関するモデル構築の予備的検討を行なった。まず、研究の理論的背景について、(1)「心の発達」と会話、(2)語用論知識、(3)関連性と認知コスト、(4)発話解釈と文脈情報、に関して文献資料の整理を行った。 次に、まだじゅうぶんな言語知識や語用論知識を持っていない発達途上の子どもとの対話において、おとなは子どもの発話意図をどのように推論していくのか。また子どもはどのようにしておとなの発話意図を正確につかむようになっていくのか。これらの語用論知識の発達について、(1)会話成立の基礎、(2)共同注意の成立、(3)フォーマットの成立、(4)スクリプト知識の発達、に関して文献資料の整理を行なった。 会話における語用論的知識とは,人が発話や発話解釈にあたって文脈的知識を基盤にどのように文脈情報としてとりいれるのかという文脈情報を操作する知識であり、人が会話で用いる文脈の範囲,および文脈の選択のしかたであると仮定した。そして、おとな(養育者)が日常会話で子どもに対して,どのように会話を構造化しようとし,どのような対話者であろうとするのか、また、会話における子どもの発話意図をどのように援助するのかを、1.隣接発話対の出現状況、2.5歳までの会話維持機能発話の出現、という視点から母子観察データーを検討した。 その結果、会話維持機能発話の分析を進めるにあたり、具体的な会話状況で(1)聞き手が持っている仮定、(2)発話解釈が言語知識に依存するのか、文脈情報に依存するのか、(3)聞き手の推論は話し手の意図に合わせようとするのか、(4)聞き手の仮定と発話または、文脈が矛盾したり、あいまいな文脈では、発話解釈は言語知識に依存するが、文脈情報に依存するのか、話し手の意図を再調整するのか、などの視点からの分析が指摘された。
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