研究概要 |
発達性言語障害の児、すなわち精神発達は正常であるが言語発達遅滞を有するもの、4名に脳SPECT(99mTc-HMPAO)を行なった。年齢は3y0,3y5,4y3,4y10である。てんかんは2名で、luminalを服用しているが、血中濃度はかなり低値であるので、薬剤による影響はほとんどないと思われる。全例で脳波検査では発作波は認められなかった。CTスキャン,MRI検査では異常が見られなかった。 脳SPECT画像をソフトウェアSPM96により大人の標準テンプレートの形に変型して検討した。登校拒否,チック,注意集中困難などでSPECTを施工した学童6名(8〜11歳)をコントロールとした。 コントロール群と比較した結果、次の4ヵ所で有意な脳血流量の低下を認めた。 1)左前頭前野2)右帯状回3)右基底核4)両側小脳半球。 今回の結果について考察を加える。発達性言語障害や学習障害ではMRIによる検討で左前頭前野が小さいという報告もあるので、左前頭前野の脳血流量低下はこれと符合する現象と考えられる。右帯状回の血流低下の意義は明らかでない。基底核の機能異常には、今回は非優位側の血流低下であり、失語(言語発達遅滞)との関連性ははっきりしない。小脳半球の障害では、発達性言語障害との関連性は否定的である。このように、3ヵ所でこれまでの報告にない、新しい所見を得た。発達性言語障害の脳血流量所見の特徴,視覚認知障害との関連性を明らかにするにはさらに多数例での検討が望まれる。
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