研究概要 |
本研究は,被験者に多様な認知的な作業を課し,その所要時間を計測しておいて,それらの作業に関与する素過程の組み合わせの違いから,各素過程の所要時間を推定するものである.ここでは,認知的な作業として,ストループ課題(印刷の色と語の意味とが矛盾する字[例えば,青いインクで印刷された「あか」という文字表示など]に対して,文字を無視して色命名を求める)を,呈示文字の種類ならびに呈示および回答言語の各面で大幅に拡張した課題を設定した.このような試みは,これまでのストループ現象に関する実験的研究にはなかったことで,極めて独創的な方法であると自負している. 被験者は学部学生約50人で,呈示文字の言語としては日本語と英語で,呈示文字は日本語については漢字・ひらかな・カタカナの3種類,英語については小文字の英語綴り,カタカナ表現,ひらかな表現の3種類である.回答言語は日本語と英語を用いた.この他に,参照用の呈示内容として,色マークのものと被験者にとっての未知言語であるスペイン語のものも使用した.印刷色としては,黒,文字と一致した色,文字と矛盾した色の3種である.これらの,(呈示言語[2]×呈示文字種[3]×印刷色種[3]+色マーク+スペイン語)×回答言語[2]の組み合わせの合計40通りから主なもの20通りを選び,各50試行の実験を行った.色の概念に関する暫定的な結果の一部を示す. a)1語あたりの日本語から英語への変換時間(読み取り後から変換完了までの平均値) 漢字から:200ms,ひらかなから:320ms,カタカナから:430ms b)心内辞書の当該概念へのアクセス時間(呈示された文字の読みとりも含む) 漢字から:250ms,ひらかなから:290ms,カタカナから:410ms c)ストループ効果のモデル 文字矛盾色命名所要時間=文字読み時間+色命名時間
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