研究概要 |
平成9年度,本研究では,地質調査所の航海GH92で日本海大和海盆から得られた703海底コアについて,2cm間隔で採集された約350個の試料,および,国際深海掘削計画第160次航海で得られた5地点のピストンコア(963,964,966,967,969地点)について,5cm間隔で採集された約800個の試料の分析・測定を行った.分析項目は,XRDによる全岩鉱物組成分析,可視分光反射,含水率,乾燥かさ比重,64μm以上の粒子の重量率,有孔虫化石群集組成,有孔虫殻の酸素・炭素同位体比,有機物の炭素,窒素同位体比などである. これまでのところ,日本海コアについては,最終氷期を含む過去約8万年間の欠損のない連続試料であること,最終氷期の暗色層には,計5層準に縞状の堆積物が保存されていること,堆積物の暗度の変動は陸上起源と考えられる有機炭素含有量と相関がよく,グリーンランド氷床や北西大西洋域で確認されているダンスガード・エシュガ-変動に極めて告示した変動パターンを示すこと,などが判明した.地中海の各コアは,日本海に比べて堆積速度がかなり遅く,また,コアによって異なり,約40万年(969地点)〜13万年間(967地点など)の記録であることが,酸素同位体層序,サプロペルを用いた地球軌道要素較正による層序によって明らかとなった.日本海の数千年周期の暗色層堆積に比べ,地中海は,地球軌道要素のうちの歳差運動(約2万年周期)に応答して暗色層(サプロペル)が堆積しており,その形成にはアフリカモンスーン変動が深く関与していることが裏付けられた.コアの基礎的な検討(堆積物の連続性や,全体の時間的長さ,物理特性値)などの分析を終えたので,引き続く,分析作業と,特に,過去3万年間のデータの吟味が今後の課題である.
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