低次元電子系と量子化された輻射場との相互作用によって、双方の量子ゆらぎや量子コヒーレンスがどのように相互影響を与えるかを、時間発展描像で明らかにするのが本研究の目的である。そのために3つのモデルを溝築し、多角的に考察を行なった。 1.ジョセフソン接合系での電子場(超伝導トンネル電子対)と量子化された光子場との結合系の時間発展を数値計算し、両者間のコヒーレンス移乗ダイナミクスを解明した。特に、超伝導電流ゆらぎと光子場の光子数ゆらぎ・直交位相振幅ゆらぎとの相互時間相関関数を得ることにより、両者の正の相関が明らかになった。また、光子数スクイジングや直交位相振幅スクイジングが生じる。本理論を実験へ適用するためには、散逸効果の考慮が不可欠である。 2.半導体超格子にdc電場を印加した系では、電子のブロッホ振動が生じる。この電子と相互作用する量子化電磁場の量子状態を考察した。dc電場強度を制御することにより、輻射場はコヒーレント状態や直交位相振幅スクイズド状態になりうる。また、光学的Kerr効果も生じうるので、光子数スクイジングも可能である。初期状態からの時間発展や散逸効果などは残された課題である。 3.3次の非線形光学媒質中での4光波混合過程では、スイジングした位相共役光が発生しうる。その非線形媒質を直列に並べた系の量子非線形光学応答を転送行列法で解析した。各媒質の励起光の位相を人為的にシフトさせる「励起位相変調法」により、単一媒質の場合では不可能だったスクイジング制御が初めて可能になる。位相共役反射と通常反射とが混在する場合の一般論も展開し、通常反射はスクイジング特性を劣化させることが明らかになった。
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