研究概要 |
半導体発光素子を用いると、注入する電流の揺らぎを小さくすることにより、非古典光(サブポアソン光)を比較的容易に発生することができる。非線形光学効果による非古典光の発生に比べると、実験装置が簡便である、エネルギー効率が良い、デバイスの構造や電子系を変化させることによるシステムの制御性が良い等の利点がある。応用上の観点から考えたとき、サブポアソン光に求められる性質は、次の3つである(1)量子揺らぎのスクイージングの量が大きいこと、(2)周波数帯域が広いこと、(3)強度が弱いことである。この重点領域研究が始まった時点では、半導体素子からサブポアソン光が発生できるという原理的なことは良く知られていたが、上記の観点からの詳細な研究は行われていなかった。この重点領域研究の結果、上記の3点の何れにおいても最も優れた性質を持つサブポアソン光を発光ダイオード(LED)を用いて発生することが出来た。さらに、それらの限界を探ることにより、サブポアソン光発生の基本的なメカニズムについても物理的な理解が深まった。スクイージングの起こる周波数帯域に関しては、室温での実験で、注入電流の大きさに依存する結果が得られた。この実験結果は、巨視的クーロンブロッケイド効果により良く説明することが出来た。但し、昨年度の時点では、窒素温度での振る舞いは、キャパシタンスの大きさが増大しているような実験結果が得られているだけで、その詳細は不明であった。今回は、30Kから室温までを連続的に変化させることの出来るクライオスタットを用いた実験を行った。実験の結果、注入電流を一定にしたときの、スクイージングバンド幅は、温度に逆比例していた。但し、比例係数から求めた接合容量の値は、注入電流に依存して変化していた。室温で実測したキャパシタンスも注入電流とともに変化しており、従来の解釈を変更する必要性が分かった。量子リピータに関しては,実験の準備と理論的な計算を行った.その結果,平均効率と微分効率が異なる場合は,理リピータの特性が著しく低下することが分かった.
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