研究概要 |
プロトンと正孔の混合伝動体であるSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_3固体電解質の熱起電力を測定し,プロトンおよび正孔の輸送熱を求めた。実験装置はカンタル線抵抗炉の中に小型の抵抗炉を挿入し、この中に試料を入れ、小型抵抗炉の温度を高温側として所定の温度にし、低温側を変化させて0〜100Kの温度差を付けた。試料の長さは約30mmの棒状である。その両端に0.5mm径の白金線を巻き電極とした。それぞれの電極にはR型熱電対を溶接し、温度を測定すると同時に白金線をリ-ド線として熱起電力を測定した。炉の温度は773〜1273Kである。炉内雰囲気は水蒸気圧を1308〜9344Pa間の所定の分圧に調整した酸素あるいは空気である。熱起電力は定常状態で測定した。ゼ-ベック係数は負の値を示し、水蒸気分圧1308Paの酸素ガス中では1273Kで-0.7532mV/K,773Kで-0.2604mV/Kであり、白金の絶対熱電能よりかなり大きく,酸素イオン導伝体であるZrO_2-9MgOやZrO_2-8Y_2O_3固体電解質の1773Kでの値、それぞれ-0.25mV/K、-0.153V/Kと比較しても大きい。輸送熱Q^*_iとゼ-ベック係数のαの関係α=F^<-1>[-t_H(dμ_<H2O>/dT)/2+(1-t_h)(dμ_<O2>/dT)/4-(t_hQ^*_H+t_hQ^*_h)T^<-1>]と,定常状態での式(dμ_<O2>/dT)/4-dμ_<H2O>/dT)/2=(Q^*_H-Q^*_h)T^<-1>から,プロトンとホールの輸送熱は1273Kでそれぞれ63kJ/molと179kJ/mol、773Kで10kJ/molと87kJ/molで温度の1次関数で表される。また、水蒸気分圧、酸素分圧依存症は小さい。ここでμは化学ポテンシャル,はファラデー定数である。
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