研究概要 |
本研究では、電子(ホール)-酸化物イオン(プロトン)混合伝導体の高温電子輸送特性を、電気伝導度測定と熱起電力測定の結果から古典的解析法に基づいて解析し,電荷担体の部分ゼ-ベック係数と輸送特性から電荷担体と熱の移動の相互作用をあらわす輸送熱について検討を加えることを目的とする.具体的には酸化物イオン-電子混合導電体である1mol%InO_<1.5>をドープしたCaZr_<1-x>In_xO_<3-8>(CZ)および酸化物イオン-電子混合導電は体であるY_2Ti_2O_7(YT)を対象とした. CZ系の電導度測定では,高酸素分圧領域で酸素分圧の1/4に比例したp型伝導が優勢な領域と酸素分圧依存性を示さないイオン伝導が優勢な領域が観測された.イオン伝導の主成分は酸化物イオンであるが1100℃以下の温度ではプロトンによる影響が導電特性に表れている.部分電気伝導度から求めた輸率を用い,熱起電力の測定結果を解析してホールおよびイオンの部分ゼ-ベック係数を求め,p型伝導領域におけるホールの濃度と移動度を推定した.CZとCSZのホール濃度は同程度であり,両者のホールの部分伝導度の相違は移動度の差によるものと推定される.一方YT系については,低酸素分圧領域では電子伝導が,高酸素分圧領域では酸化物イオン伝導がそれぞれ優勢であった.CZと同様の方法により熱起電力を解析し電子と酸化物イオンの部分ゼ-ベック係数をもとめ,伝導電子の濃度と移動度を推定した.またイオンの部分ゼ-ベック係数から求めた両系の酸化物イオンの輸送熱はイオン伝導の活性化エネルギーの1/4〜1/3の大きさであった.この原因は,欠陥型のイオン伝導性固体ではイオンと格子の相互作用が大きいためと考えられる.
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