研究概要 |
ハロゲン化銀などの固体電解質について,よく成長した単結晶よりも粉末を圧結した多結晶体の方が室温付近では高いイオン伝導性を示し,また粉末の比表面積が大きい(粒径が小さい)ほど顕著なイオン伝導性の増大を示す一般的な傾向が知られている。そこで,固体電解質の多結晶体あるいはコンポジット系のイオン伝導性に粒界がどのような影響を与えているかを明らかにすること,また固体電解質を微細粒子化することにより,どこまで室温付近でのイオン伝導度を向上できるかが興味深い課題となる。本研究では、はじめにヨウ化銀を低圧の不活性ガス中で加熱し,原料物質の蒸気を急冷凝集することにより微粒子を得る方法(ガス中蒸発法)を用いて100nmから1μmの大きさのヨウ化銀微粒子の作製をおこない,これを圧結した多結晶体の電気伝導性が粒径にどのように依存するかについて調べた。つぎに液相反応によりヨウ化銀の100nm以下のサイズをもつ超微粒子を作製することを試みた。一般的に液相での超微粒子の作製は極端に低い濃度条件が必要となり実験室のスケール電気伝導度の測定が可能なほどの収量を得ることは困難であるが,水溶液中で二価金属のカルコゲナイドを合成する際にチオール(RSH)を共存させて微結晶の表面を不活性化し結晶成長を制限する方法(チオール不活性化法)によればかなり高濃度の条件でもナノメートルサイズの超微粒子を作製できることが最近報告された.チオールは銀イオンとも強い結合性を持つために,ヨウ化銀の微結晶を生成する際にチオール(RSH)を共存させれば化学反応Ag^++RSH→AgSR+H^+によりAg^+イオンの一部がチオールと結合しAgl結晶の成長を制限することができる。本研究では3-mercapto-1,2-propanediol(RSH=CH_2(OH)CH(OH)CH_2SH)を用いてヨウ化銀微結晶のサイズ制御を試み,得られたコンポジット試料(wurziteとzinc blendeの混合物2)について交流電気伝導度の測定を行った。 気相での微粒子作製法のひとつであるガス中蒸発-マトリクス分離法によりヨウ化銀の微粒子を作製した。透過型電子顕微鏡HITACHI,H-8100を用いて中止の形状とサイズについて調べ,粉末X線回折計RIGAKU,RINT-2000により構造を調べた。この方法で作成したものは主成分はzinc blende型に20%位のwurziteが混入していた。粒界における過剰のAg^+イオンの移動が高い伝導度の原因であると考えられた。
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