研究概要 |
イオン導電体の単結晶を用いたインピーダンス分光法は,系で起こっている微細な変化を高感度に検出でき,広範囲な周波数領域で測定するため,イオンと格子の相互作用,質量をもつ荷電粒子としての電磁界との相互作用を研究できる強力な分析方法である.今までに異なる伝導機構を有する系を,インピーダンス分光法を用いて1Hz〜10^<11>Hz複素導電率の周波数特性を測定し,イオンの輸送のダイナミクスについて多くの知見を得た.本研究では,現状よりさらに高温および低温度領域まで測定温度範囲を拡張できる装置を構成し,現有の高分解能の複素導電率の測定装置により,1Hzから2GHzの周波数範囲で,77K〜633Kの温度範囲で同一セルで測定できる系を構築し,種々の形態のポテンシャル障壁を越えるホッピングプロセスや一次元超イオン導電体アルカリガロチタノガレイトのような系で一次元トンネル構造中のアルカリイオンの運動を阻害する過剰酸素イオンとトンネル中にはみ出したGaイオンからなるブロックのダイナミクスを研究した.その結果,ブロックの運動は移動箱モデルにより良く記述できることが分かった.また過剰酸素イオンは隣接するアルカリイオンおよびGaイオンの両方と相互作用を受けることを見いだした.β-PbF_2-SnF_2固溶体系では,Pbイオンを同じイオン価数のSnイオンで置換した場合,フッ素イオンの伝導に関して,ポテンシャルに無秩序性が発現することが分かった.これにより,フッ素イオンがポテンシャル障壁を越えるときのAttempt周波数を求めることができた.またフッ素イオンはすべて伝導に寄与していることが判明した.以上の成果を,Solid State Ionicsに二編投稿し,一編は掲載され,他は,審査中である.
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