研究概要 |
内径約11Åの細孔が単純立方構造で配列したカリウムタイプのゼオライトK-LTAにカリウムを吸蔵させた系では、ゼオライト自身のもつカリウムイオンと吸蔵させたカリウム原子とがいっしょになり,カチオニッククラスターが細孔内に安定化させる.そして,クラスターの4s電子が様々な磁気的・光学的性質を示す。この系では細孔当たり(クラスター当たり)平均5個程度の4s電子を含むと最も顕著な強磁性が低温で観測される.その強磁性は,当初提案された遍歴電子の弱い強磁性モデルとは異なり,モット絶縁体モデルで説明できることを明らかにした.クラスターの磁気モーメント間には反強磁性相互作用が働いており,その磁気モーメントの大きさが異なるために,反強磁性転移に伴って自発磁化が発生するというフェリ磁性モデルを提案した.更に,カリウム吸蔵濃度を増加させると,ワイス温度とキュリー温度は系統的に変化し,最大濃度では常磁性状態になることがわかった. 一方,内径約13Åの細孔がダイヤモンド構造で配列したカリウムタイプのゼオライトK-FAUにカリウムを吸蔵させた系では,上記の系とは大きく異なる結果が得られた.カリウム濃度が希薄の場合を除いて,この系は金属状態にあり,電子スピン共鳴スペクトルは,常にシャープな構造が現れることがわかった.カリウム吸蔵量を増加させると,シャープな構造を保ちながら裾が顕著に増大する現象が見いだされた,これは,カリウム吸蔵量の増加と共に,スピン格子緩和が顕著に増大していることを示している.通常,スピン格子緩和はスピン軌道相互作用が媒介するので,この結果はs電子系であるにもかかわらず,スピン軌道相互作用がクラスターにおいて顕著に増大している事を示している.
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