研究課題/領域番号 |
09216207
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高塚 和夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70154797)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1997年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | クラスター / 非線形力学 / カオス / 化学反応 |
研究概要 |
本年度は、保存系としてのクラスターの構造転移反応について見い出された、次の事実の物理的原因および機構について集中的に究明した。それは、(1)クラスターが一つの構造(ポテンシャルベイスン)を通過して他の構造に転移する際、そこを通過するのに必要な平均時間(平均通過時間=平均寿命)は、どのベイスンから入ってきてどこへ出ていくのかは関係無く、現在通過中の構造とエネルギーだけで決まること、(2)各構造の平均寿命の分布が、短寿命領域で指数関数分布から著しくずれること、および、このずれ方にポテンシャル関数のトポグラフィーの依存性が顕著に現れること、である。 各構造の間の遷移状態のエネルギーは高さは、すべて異なっているので、(1)の結果は化学反応論の常識に正面から反する。また、(2)の事実は、化学反応の統計理論が仮定している「遷移状態領域へのポピュレーションの瞬間的補給」に反している。ここには、(つまり、高エネルギー・多チャンネルの反応には)新しい反応論が必要であることが、強く現われている。我々は、ポテンシャル関数によるダイナミクスの違いに注目しながら、位相空間構造を調べた。結論としては、(1)位相空間には、補足領域と輸送領域が存在して、輸送領域の大きさがカオスによって規定されており、ダイナミクスの複雑性と平均寿命の分布を決めていること、(2)輸送領域の大きさは、ポテンシャルの大域的な形によって決められること、(3)輸送領域における遅い拡散的な振る舞いが、平均寿命の指数関数分布からのずれを生んでいること、等が明らかになった。さらに、これらの解析は、「inter-basin mixing」という新しい混合性の概念に導いた。これは、多ベイスン問題のダイナミクスの基本概念として極めて重要である。
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