研究概要 |
IR Dip分光法を水素結合両性分子である7-アザインドール及びその水和クラスターに適用し、NH,OH振動の倍音準位の観測に成功した。6900cm^<-2>に観測されたバンドをNH伸縮振動の2倍音2υ_<NH>と帰属し、NH伸縮振動の基音の振動数3520cm^<-1>と合わせて振動数ω_0=3590cm^<-1>,非調和性ω_<0χ0>=-70cm^<-1>を得た。これにより解離エネルギーD_0=ω_0^2/4ω_<0χ0>=46000cm^<-1>と求めた。一方、7-アザインドール・(H_2O)_1クラスターに対しては6637cm^<-1>に観測されたDipをNH伸縮振動の2倍音υ_<NH>と帰属し7290cm^<-1>に観測されたDipをクラスター内の水の逆対称伸縮振動υ_3の2倍音と帰属した。これによりクラスター内のNH伸縮振動に対しω_0=3504cm^<-1>,ω_<0χ0>=-93cm^<-1>,解離エネルギーD_0=33000cm^<-1>と得た。水分子とのクラスター形成によりNH伸縮振動の解離エネルギーが13000cm^<-1>も低下していることが明らかになった。この値は同じ手法で測定したフェノールの水和による解離エネルギー安定化(9000cm^<-1>)よりもはるかに大きい値であり、水素結合両性分子が二つの水素結合を同時に形成して強固な水素結合を形成できることが明らかになった。さらに、プロトン移動反応活性になるS1電子励起状態の構造を調べるため、蛍光検出系を製作し、7-アザインドールと同じく電子励起により反応活性となる1-ナフトール及びその水和クラスターにUV-IR蛍光Dip分光法を適用した。この結果、電子励起状態での赤外吸収の観測に初めて成功し、クラスター構造の決定及びその反応性との関係を論じた。これらの結果は論文投稿中である。
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