研究概要 |
1.LB膜を用いた強磁性トンネル接合の生成 強磁性体の電極として80NiFeおよびCo,絶縁体はpoly-N-dodecylacrylamide(PDDA),ferrocenyl-methyle-acrylate(Fc)との共重合体およびRuを用いた.トンネル接合のパタ-ニングはメタルマスクを用い接合面積を100x100〜500x500μm^2の範囲で変化させた.これらの分子のへテロ積層および混合LB膜は光誘起電子移動反応を示した.トンネル抵抗と接合面積は1つの直線状にのる傾向を示し,Al_2O_3を用いた接合と比較して同等の抵抗を示し,分子種による明確な違いは見られなかった.これらいずれの膜を用いても磁気トンネル効果を示しが,ほとんどの接合の磁気抵抗比は1%以下にとどまった.トンネル抵抗の低い接合においては磁気抵抗比の上昇が観測されが,これはgeometrical enhancementにより磁気抵抗比が上昇したものであると結論された.これより機能団であるFcMA,Ruは暗状態ではトンネル特性および磁気抵抗比に影響を及ばさず,DDAによる特性のみで特性が支配されている事がわかった. 2.IETSによる金属-有機界面の電子状態の解析 PDDAを用いた接合には金属あるいは金属酸化物フォノンによるピークに加え,PDDA分子のCH_2はさみ振動,CH伸縮振動,NH逆対称伸縮振動の各分子振動モードに帰属されるピークが見られ,FT-IRスペクトルのピーク位置と良く一致した.一方,ゼロバイアス近傍に明瞭なピークは観測されなかった.これは両強磁性体電極からの不純物が少ないことを物語っている.また,マグノンモードが少ないことから,界面層の酸化が進行して接合界面のスピン分極率が低下していることがわかった.
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