研究課題/領域番号 |
09217240
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
矢野 重信 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60011186)
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研究分担者 |
三方 裕司 奈良女子大学, 理学部, 助手 (10252826)
棚瀬 知明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50207156)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1997年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 二核錯体 / 酸素錯体 / コバルト / 結晶構造解析 / 配糖錯体 |
研究概要 |
1.生体内における基幹物質の一つである糖質の配位化学的挙動の解明は、生物無機化学の分野において興味深い研究課題である。本年度は糖環がキレート面に対して平行に配向するD-グルコース(D-Glc)_4)および二糖であるマルトース(α-D-Glc-(1→4)-D-Glc) (Mal)を用いてコバルト配糖錯体の合成を行い、得られた錯体の構造および酸素分子の着脱能を検討した。 2.1)[{Co((D-Glc)_2-tren)}_2(μ-O_2)]X_3・5H_2O(X=Cl(1a),Br(1b))及び[{Co((Mal)_2-tren)}_2(μ-O_2)]Cl_3・6H_2O(2)を合成しそれらのX線結晶構造解析を行った。 2)錯体1a,2を窒素下で紫外線光照射による酸素分子の着脱能を検討した。 3.元素分析結果から1a・5H_2O、1b・5H_2Oならびに2・6H_2Oの組成であることが判明した。錯体カチオンは擬C_2対称の構造をとっており、IR、UV、CD、NMRから予想されたように2個のCo原子間に酸素分子が架橋する二核構造となっている。架橋酸素結合距離はO-O一重結合に対応するペルオキソ架橋であることが明らかとなった。 錯体1a,2を窒素下で紫外光照射するとペルオキソ架橋二核錯体に特徴的な400nmの吸収が消失し、また照射後空気に触れると400nmの吸収がそれぞれ76%(1a)および26%(2)まで回復した。このことから錯体1a,2は紫外光照射によりCo(II)錯体とO2に変換し、また生成したCo(II)錯体は酸素を吸収して錯体1aおよび2を再生すると思われる。グルコース錯体1aはマルトース錯体2に比べて酸素架橋錯体の再生率が高いことから、糖の違いにより錯体の安定性に違いが生じたものと思われる。 4.糖質の選択により酸素分子の接近を制御しうることを見いだした本研究は糖質を機能素子とする分子識別能を有する超構造錯体の設計にとって有用な情報を与えるものである。
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