研究概要 |
ポリサイラミンはリチウムアルキルアミド存在下、ジビニルシランとジアミンのアニオン重付加によって合成される。合成条件により両末端に2級アミノ基を有するポリサイラミンテレケリックスが容易に合成された。この末端2級アミノ基を利用し、物理及び化学架橋型ゲルを調製した。物理架橋ゲルとしては4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナ-ト(MDI)及び鎖延長剤としてエチレンジアミン(またはプロピレンジアミン)を用いて水素結合性ハードセグメントを有するポリサイラミンウレアを調製した。これはDMAcなどのような溶媒に可溶で、かつ水中でハイドロゲルになることが確認された。 一方、化学架橋型ゲルとしてはポリサイラミンテレケリックと2倍モル量のトルエン-2,4-ジイソシアナ-ト(TDI)とを反応させ、両末端にイソシアナ-ト基を有するポリサイラミンを調製した後、トリメチロールエタンで架橋した。 この用にして得られた各種ポリサイラミンゲルの膨潤挙動を検討した。まず、ポリサイラミンの良溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)、メタノール(MeOH)及び10^<-2> mol L^<-1>塩酸中で膨潤度測定を行った結果、ハードセグメントを有するポリアミンウレアは有機溶媒中で、100から300%程度するのに対し、イオン強度0.05の0.01mol L^<-1>塩酸中では1,000%と3から5倍程度の膨潤度を示した。さらに化学架橋型ポリサイラミンゲルは有機溶媒中では2,000%程度なのに対し、塩酸中では16000%と一桁近い膨潤挙動の差を示した。 有機良溶媒中においてポリサイラミンゲルは、ポリマー鎖/溶媒間相互作用による正の膨潤に対して、ネットワークのゴム弾性が負に働く典型的なゲル膨潤を示している。一方、塩酸中でのゲルの膨潤は、プロトン化することにより(イオン浸透圧とともに)、ゲルネットワークが堅く広がった結果、負のゴム弾性が軽減されたものと考えられる。このようにポリサイラミンゲルは通常のハイドロゲルとは全く反対に、ポリマー/溶媒相互作用が正に転じたときに(膨潤状態で)ネットワークが剛直化しようとする特性を有するユニークなゲルであることがわかった。
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